「龍は眠る」宮部みゆき|超能力者ゆえの苦悩

龍は眠る / 宮部みゆき

もしも身近に超能力者がいたとしたら。もしも自分が超能力を持ってしまったとしたら。

あらすじ

嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。何となく不思議なところがあるその少年、稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ……宮部みゆきのブロックバスター待望の文庫化。

本の感想

普段何気なく「人の心がわかったらなぁ~」なんて思うことがあるが、本当に人の心がわかるようになったとしたら、それはどれほどの苦しみを伴うのだろう。

生きていれば、時には表立って人には言えないような醜い感情も生まれたりするものだ。人は本音と建前で生きている。生まれてこの方本音しか言ったことがない、なんて人間がいるなら見てみたいものである。建前があるからこそ、世の中は上手く回っている。

知らないから幸せということはある。理解できないから平気でいられるということで、生活は成り立っているのだ。

友達がいけなくなったからと嘘をついて主人公をデートに誘う同僚に、先回りして嘘を言い当ててしまうシーンがある。傷つき去っていく同僚を見た主人公の心の声が、超能力を持つことの怖さを物語っている。

こうやって人を傷つけることも、自由自在だ。

人の心が読めることで苦悩する2人の少年。超能力は本当にあるのか、信じる気持ちと信じられない気持ちの狭間で揺れる主人公。宮部さんの小説は本当に心理描写が上手いなぁと思う。特に宮部さんが描く少年はとても魅力的だ。厚みのある本だけれど、少年の超能力と事件が絡み合い、惹き込まれてぐいぐい読める。とても面白くて、なんとも切ない。