「ステップファザー・ステップ」宮部みゆき|双子の父親役をするプロの泥棒の物語
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初めて読んだのはいつだったかな。もう何度か読んだことのある作品だけど、やっぱり面白いなぁと思う。宮部さんの作品の中ではわりとライトな感じなので気軽に読める。

「ステップファザー・ステップ」のあらすじ

中学生の双子の兄弟が住む家に落っこちてきたのは、なんとプロの泥棒だった。そして、一緒に暮らし始めた3人。まるで父子のような(!?)家庭生活がスタートする。次々と起こる7つの事件にユーモアあふれる3人の会話。宮部みゆきがお贈りする、C・ライス『スイート・ホーム殺人』にも匹敵する大傑作!

「ステップファザー・ステップ」の感想

主人公はプロの泥棒。それもけっこう有能な泥棒なのだが、ガードの堅い家に屋根から侵入しようと試みたところ、不運にも落雷の影響により落下してしまう。目が覚めると双子が住む家で看病されていた。双子の両親は同時期にそれぞれ違う人と駆け落ちをしたと言う。お金が底をつき困っていた双子に脅された主人公は、仕方なく父親役を受けることに・・・という現実には有り得ないようなぶっとんだ設定だけど、登場人物たちが魅力的で実に面白い。

本作は7つの短編で構成されている。両親がいないことを悲しむどころか、泥棒を父親役に迎えて自分たちだけでのんびり暮らしたいという双子には最初のうち不気味さも感じるが、一方で子供らしい一面もあり、お父さんと呼んで主人公に懐いている様子はとても可愛らしい。初めは嫌々父親役をしていた主人公も、話が進むごとに双子に愛情を抱いていくのが伝わってきてほっこりする。双子の掛け合いはリズミカルで面白く、思わずクスッと笑ってしまう。

この先、両親は帰ってくるだろうか。その事で主人公が思い悩む場面がある。疑似家族はいつか終わりを迎えるかもしれない。その日を思うと切ない気持ちにもなるが、幸せそうな3人の姿にこの関係が長く続くといいなと願わずにはいられない。

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